Japan Accessibility Conference – digital information vol.2 参加レポート

はじめに

2019年7月20日に開催されたJapan Accessibility Conference – digital information vol.2に参加してきました。2017年に開催された第1回には参加しておりませんでしたので、今回がはじめての参加となりました。セッションのラインナップを事前に見たところ、Webに寄ったセッションが少ないと感じましたので、あえてWeb系以外のセッションに参加してきました。この記事では、セッションの感想を中心に書いていきます。

イベント自体のアクセシビリティ

今回のイベントでは、アクセシビリティ関連のイベントでは定番になってきた、UDトークと手話通訳も当然のように準備されていました。また、他のイベントでもあったのかもしれないのですが、今回はじめて見たのは、車椅子優先席と手話通訳が見やすい席です。

車椅子優先席は、普通に机があるのに椅子が無い場所があって、なんで椅子がないんだろうと思っていたところに、電動の車椅子の方が颯爽といらっしゃったので、車椅子の方用の場所だと気づくことができました。あまり、道で車椅子の方を意識して見る機会がなかったのですが、結構機動力があり驚きました。

手話通訳が見やすい席については、一番前の席が優先枠として設けてあるというものです。確かに、耳の聞こえない方の情報保障として手話通訳の方がいらっしゃっているのに、前の席の人が邪魔で手話が見えないと本末転倒なので、とても良い配慮だと思いました。

セッション「精神・発達障がい者の社会へのアクセシビリティ」

こちらのセッションは、グリービジネスオペレーションズの代表取締役社長である福田さんによる、精神・発達障がい者の方が主に働かれている会社についての発表がありました。

とても素敵だなと思ったのは、働かれている方たちを決して過保護にしたり、できることだけやらせるのではなく、ちゃんと成長を促しているという点です。もちろん、「受け入れ困難な価値観にムリに同調する必要ない」のように、いわゆる健常者と同じようにしろとは言っていないのですが、ちゃんと各社員と向き合って特性を理解をし、ちゃんと個々人が働いて成長できる環境・設備を用意しているのは、とても素晴らしいと思いました。あまり発達障害の症状は詳しくないのですが、グリービジネスオペレーションズのオフィス紹介ページを見れば、ちゃんと物理的な配慮がなされていることがわかります。デスクトップパーテーションは自分の会社にも欲しいと思いました。

私は知らなかったのですが、「特例子会社」は社会的イメージがあまりよくないようです。国からの補助金を目当てに、とりあえず障害者を採用はするものの、ほとんど仕事をさせないというような事例が多く離職率も高いということでした。ですが、このグリービジネスオペレーションズはちゃんと障害者の仕事を作り、前述のように成長もできる仕組みを作っているようです。

人口減が進む日本では、その対策が急務です。私の中では、外国人を受け入れるという選択肢が大きいと考えていました。ですが、グリービジネスオペレーションズのように、障害者の方に適切な環境を設けることでも、この人口減問題の解決に貢献できるということがわかりました。大変、社会的意義のある事業だと思います。

セッション「色弱の私が色は大事だという理由」

NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構の副理事長で、ご自身が1型2色覚という色覚障害の伊賀さんによる発表でした。

一番心に残っているのは、最後のスライドにあった「誰もが自分の色の見え方に誇りを持てる社会に」という言葉でした。どうしても、色覚”障害”や色覚”異常”というように、通常の色覚とは異なると捉えられてしまいますが、当事者自身はその見え方しか知らないので、自分が障害者である/通常とは異なった色覚であると言われても、受け入れることが難しいのだと思います。

事例としては、肉が焼けたかどうかわからないや、ウニとわさび・ねぎととうがらしを間違えるというものがあるようです。こういう話を聞くと、ウェブサイトを作る際には、WCAGに書いてあるように色だけに頼らないデザインをしなければならないと思ってしまうのですが、伊賀さんの話によると、ちゃんと色の調整をすれば色覚障害の人でも色で見分けることができるということでした。これは初耳でしたので、驚きでした。

この色覚異常の人でもちゃんと見分けられるような配色が広まっていくことによって、色覚の違いによるギャップが埋められていくのだと思います。そんな世界になれば、誰しもが自分の色の見え方に誇りを持てるようになるはずです。

セッション「障害者の働くを解決する ~ 障害者専門クラウドソーシングサービス「サニーバンク」の取り組み」

障害者専門クラウドソーシングサービスの「サニーバンク」の上濱さんと、アドバイザーの伊敷さんによる、障害者雇用の現状とサニーバンクでおこなっているWebアクセシビリティ診断について、お話いただきました。

まず、障害者の雇用については、法定雇用率のためだけにとりあえず障害者を雇用している会社があるなど、かなり厳しい状況のようで、1年で半分以上が離職しているという現状のようです(それだけに、前述のグリービジネスオペレーションズはかなりすごいという話だと思います)。サニーバンクでは、離職の要因になっている「勤務時間・場所・人間関係」に障害者の方がしばられないように、業務委託というかたちを取っているようです。

そして、面白かったのが、障害者特有のスキルについての事例でした。できないことを克服するために修練した結果、いつの間にか健常者を大きく超えるスキルを持つようになっている人がいたり、発達障害者の方の中には、まれに特殊なスキルを持っている人もいたりするようです。例としては、口紅の微妙な色の違いに気づくことができる人や、たくさんのビー玉を投げたら、一瞬でその数を言い当てる人などが紹介されました。たとえ、普通のサラリーマンのような生活はできなかったとしても、その人が輝けるような場所で仕事をすることができれば、普通の何十倍も輝けることができると思います。

セッション「全盲エンジニアがiOS/Android/WebUIエンジニアにダメ出しした結果」

AccSellを運営されている中根さんとfreeeのエンジニアである阿部さん、松本さん、山本さんのディスカッション形式でセッションがおこなわれました。

話を聞いている中で、当事者との関係があるということが重要だと感じました。中根さんという障害当事者の方がジョインされたことで、各エンジニアさんのアクセシビリティへの取り組みがはじまったという印象を受けました。やはり、身近にいる人が想定通りの利用ができていないという事実は見逃せないことだと思います。逆に身近に障害当事者がいないと、具体的にどう利用できていないかが見えないので、対応も後手後手になってしまうのかなと感じました。

セッション「私たち障害当事者ですが質問あります? – Ask Us Anything」

各障害を持っている当事者の方に、sli.doを使って、あれやこれや質問する時間でした。

IT技術が向上することによって、できるようになったことは結構多いようです。やはり移動ルートの確認も含めて、情報というものが取得しやすくなっているようでした。また、逆に障害当事者も作るということへのハードルが下がっているようです。

障害者差別解消法の施工については、罰則のない努力義務なので、決定的な効果は見られていないが、会社によっては多少の変化があるということでした。

ウェブサイトについている色反転や文字拡縮機能は、障害当事者は誰も使わない。なぜなら各自が普段から利用している支援技術で対応できるからという話はWebアクセシビリティを勉強していれば常識なのですが、伊敷さんがおっしゃっていた、ルビをふる機能については、ディスレクシア(識字障害)の方にとっては必要かもしれないというのは、新しい視点での意見でした。

障害当事者とそれ以外の人の間のコミュニケーションについては、海外と日本では違いがあるようです。日本では、見えない線引きがされているようという話がありました。英語が花性ない人が困っている外国の方を助けようと声をかけられないのと同様に、困っている障害者の方をどう助けたらいいかわからないので声をかけられないということは往々にしてあると思います。そして、伊敷さんは、なんでも聞いてほしいとおっしゃっていましたが、アクセシビリティを仕事にされている伊敷さんだからこそ、そう思えるだけで、人によってはそもそも障害を受け入れられていない人もいます。一人ひとり障害の捉え方や受け入れ方は当然違うので、人対人ということを意識して、丁寧にコミュニケートする必要があります。

さいごに

今回は、Webの話をほとんど聞かずに、障害当時者の方の話ばかり聞きました。Web界隈での、アクセシビリティの認知に関しては、まだまだ足りない部分もあると思いますが、有識者の方々の頑張りにより、以前と比べるとだいぶ認知されてきている感があります。

WCAGへの準拠やWAI-ARIAの実装など、Web界隈でアクセシブルな実装をする手段は確実に広まってきています。では、次に何をすればいいかというと、当事者の理解だと感じています。手段は充実してきたので、今度は自分のサービスや商品で、どこに重点を置いて対応すればいいのかということを明らかにする必要があると思います。

そのために、提供側は障害当事者の方の声を拾い上げる努力が必要ですし、障害当事者側は「自分が悪いから利用できないんだ」と躊躇せずに、積極的に「ここが使いづらい」と声を上げていくべきだと思います。両者の間にある壁をいかにして乗り越えていくかが、今後のアクセシビリティの課題だと感じました。

参加費1,000円と破格の値段で、このような素晴らしいイベントを開催していただいた実行委員会の方には感謝しております。人が多くて苦手な渋谷なので気が乗らなかったのですが、とても満足できました。次は、渋谷以外で開催されるともっと嬉しいなと思いながら、第3回の Japan Accessibility Conference の開催を心待ちにしています。

WordCamp Tokyo 2018 参加レポート

はじめに

2018年9月14日に新宿グランドタワーで開催されたWordCamp Tokyo 2018 に参加してきました。WordCamp は WordPress にかんするイベントで、私もこれまで何回か参加したことがあります。この記事では、参加したセッションの感想を書いていきます。ちなみに、この記事は WordPress の新しいエディタである Gutenberg を用いて書かれています。

各セッションの感想

State of the Web

こちらは PixelGrid の矢倉眞隆さんによっておこなわれたセッションです。矢倉さんといえば、Web標準のころから私の中では超偉大なお方。公式ブログでも「基調講演」と言われているようなセッションで、Web の現状について話してくださいました。

実務で Web にふれていると、どうしても Web の良さなどについて、忘れがちになってしまう傾向があるので、あらためて現状の Web のいいところと足りないところを知ることができてよかったです。

セッションの中で、一番おっと思ったのは、Google の興味がインドに向いているというところです。ネット人口がまだそんなに多くなく、これから伸びしろのあるインドは、通信環境がとても貧弱なので、AMP や PWA でリーチしていくという話でした。これには納得感しかありませんでした。

WP REST API と React で始めるリモートワークでの有料 Web メディア開発

島田俊介さんのセッション。ブースを回り終わって、少し時間ができたので、本当の終盤だけ飛び込みで参加させていただいた。クーリエジャポンと EXPAT というメディアがあって、両方で WordPress を利用しており、データの受け渡しに REST API を利用しているというざっくりとした話しかわからなかった。

また、おっと思ったのはリモートワークの話。なにか自分がアクションを起こした際は、かならずクライアントの Slack に通知が飛ぶようになっているが、今の所それについてのクレームは出ていないらしい。クライアントいわく、「何をしているかわからないよりいい」とのこと。たしかに、同じ職場の同僚の進捗もいつも気になっているし、顔が見えない環境ならなおさら不安になるのだなあと。共有大事だなとあらためて感じました。

より便利に、効率よく ! WordPress 次期エディター「Gutenberg」の基本的な操作を知って、今日から使い始めよう

Tetsuya Imamuraさんによるセッションで、WordPress の新エディタ Gutenberg に関するセッションです。おそらく、今回注目度の高いセッションのひとつだったのではなかったでしょうか。スライドはこちら

実際の Gutenberg の画面を使って、編集はどのように行うのかや各箇所の動作、これから実用するにあたっての準備を説明してくださいました。15分という短いセッションだったのですが、Gutenberg を全然さわっていなかった私には、概要をつかむには十分な内容でした。

Google 検索最新情報 2018!新しい Search Console の活用法

Google の金谷武明さんによるセッション。金谷さんは有名人なので、色々なところでお見かけします。セッションの中では、Google の取り組みを説明したあとに、新しい Search Console の説明をしてくださいました。

AMP の WordPressプラグインは、本サイトでも導入しています。色々懸念する事項はあるのですが、上述のインドの話なども含め、Web の高速化という点では、かなり重要になってくると思います。また、https については、Google が出している透明性レポートに基づき、他国に比べて日本が遅れていることについて説明していただきました。

新しい Search Console については業務でやっとさわりはじめた段階なので、各レポートの見方と気にするべきポイントを聞けたので、大変有意義でした。

Challenge PWA!! Web の舞台はホーム画面へ進撃する !

進藤龍之介さんによる PWA に関するセッション。最初の矢倉さんのセッションでもふれられていたこの PWA について説明したあとに、実際どうすれば、PWA 化ができるかを実際の画面をもとに説明してくださいました。

PWA の説明自体は先に聞いてしまっていたので、新しく知ることはなかったのですが、実際の PWA 化の手順については、うっすらと知っているだけでちゃんとした知識がなかったので、実際のファイルを拝見することができ、とてもためになりました。

PWA の構成は、コンテンツと Manifest、Service Worker の3点。コンテンツは必ずhttpsでなくてはならない。WordPress であれば、オフライン用の固定ページを作成する。Manifest は、json形式でアイコンなどの設定を記述する。Service Worker では、キャッシュの制御や PUSH 通知の設定を行う。

キャッシュの有効期限の点で悩みどころがあるが、それを解決するための WordPress プラグイン「PWA for WordPress」をスピーカーの進藤さんが作成されているので、WordPress のサイトを PWA にする際は、そのプラグインを使う。

かなり内容盛りだくさんで、時間もいっぱいいっぱいのセッションでしたが、とても満足感がありました。今回、一番ためになったセッションかもしれません。Challenge PWA!! WordCamp Tokyo 2018のスライドもご参照ください。

Gutenberg 解体新書

宇都宮諒さんによる、Gutenberg の技術的な内容に関するセッションです。当日の発表に使われたスライドはこちら

Gutenberg 自体はほぼ JavaScript でできていて、dependencies は React.js、jQueryなどで、devDependencies は、Babel や webpack。React.js で用いられる JSXという形式の書式についてや、ブラウザでそのまま実行できないその形式をトランスパイルする Babelなどについて、それぞれの仕組みや働きを理解することができました。

そのあとに、Gutenberg のブロック API  について説明していただきました。さきほどの、JSX 形式がばんばん出てきたので、学ばないといけないと感じました。私のフロントエンド関連の知識が、2015年ぐらいで止まってしまっているので、早く追いつかなければという気持ちになりました。

そして、スライドの最後で紹介された、”Learn JavaScript, deeply”という WordPress の開発者である Matt Mullenweg の言葉の通り、今後は JavaScript をより学んでいく必要があるとあらためて感じました。SEO 方面でもそういう話がありましたし。 → テクニカルSEOの上級者になりたいならJavaScriptに精通すべし

事例から見る、アクセシブルな WordPress サイトの運用現場の実際

上記のセッションが規定の時間より少し早く終わりましたので、柴田宣史さんのアクセシビリティに関するセッションの部屋に急いで入ったのですが、時すでに遅し最後のスライドが表示されていました。

Gutenberg 解体新書とこのセッションのどちらを受講しようかずっと悩んでいたので、かなり悔しい感じではありましたが、登壇者の柴田さんが以前、アクセシビリティの情報サイト「Accsell」のポッドキャストに出演されていた際に話されていた『JIS X 8341-3:2016, WCAG 2.0早見表/逆引き表』をもらうことができ、それはとても嬉しかったです。

おわりに

今回もとても有意義な会でした。運営にかんしても、開場直後の長蛇の入場列以外、大きな問題はなかったと思います。運営の方々、ありがとうございました。

個人的には、Google の動きをこれまで以上に気にしていく必要性があると感じました。それと同時に、WordPress を含めた Web の仕事をしていくなら、JavaScript をどんどん学んでいかなければという決心を新たにしました。

暗黙的な ARIAセマンティックがある要素では role 属性を外すことが今後推奨されるようだけど、まだ外すのは時期尚早

概要

ARIA in HTML で main のように暗黙的な ARIAセマンティックがある要素では、同じ意味を持つ role 属性が非推奨になったので、ゆくゆくは外していく流れ。だけど、今現在は古いブラウザの対応などがあるので、まだまだ role 属性は外せなさそう。

<main role=”main”> という記述が非推奨に

ミツエーリンクスさんのアクセシビリティBlog で、ARIA in HTML日本語訳)というものの草案が4月14日に発表されたことを知りました。HTML5.1 において、WAI-ARIA をどのように使っていけばいいかが書かれている文書のようです。で、記事を読み進めていく中で気になった点が一つあったのでメモ。

しかし、ARIA in HTMLでは、制作者は暗黙のARIAセマンティックをrole属性などで指定すべきではない(SHOULD NOT)、また、指定することは推奨されない(NOT RECOMMENDED)ことであるとしています。つまり、<main role=”main”>ではなく<main> と記述することを推奨しています。

W3CがARIA in HTMLの最初の草案を公開 | アクセシビリティBlog | ミツエーリンクス

お!HTML5.1 では、暗黙的に ARIAセマンティックが規定されている要素に対して、それと同様の意味を持つ role 属性などを付けるのは非推奨になる流れのようです。引用した記事内では main 要素の例が挙げられています。では、<main role="main"><main> と書くという話ですが、header 要素に role="banner" をつけたり、footer 要素に role="contentinfo" をつけるのも非推奨になるのでしょうか。

ARIA in HTML で確認

どの要素に対して、どの role属性を使用してもいいか、はたまた使用すべきではないかは ARIA in HTML にちゃんと書いてあるようです。ARIA in HTML の中の 2. Document conformance requirements for use of ARIA attributes in HTML日本語訳)という項目の中にあります。3列の表組みがあって、1列目は対象となる HTML の要素。2列目が暗黙的に規定されている ARIAセマンティック。これには「SHOULD NOT be used」と書かれています。使うなと。3列目は、ARIA のロール、ステート、プロパティー。こちらは「MAY be used」なので、使ってもいいよとのこと。

先ほど例に挙げられていた main 要素を見てみると、2列目には role="main"、3列目には No role / global aria-* attributes と書かれています。「暗黙的に role="main" という ARIAセマンティックが規定されているので、使っていいロールは無いよ。aria-label とかのグローバルなステートやプロパティーは使っていいよ」ということのようです。

では、前の項で挙がった header だったり footer だったりはどうなるのか。header は2列目に If not a descendant of an article or section element role=banner, otherwise NONE、3列目は先ほどの main にもあったように global aria-* attributes と書かれています。「articlesection の子孫じゃない場合は暗黙的に role="banner"。それ以外の場合はデフォルトの ARIAセマンティックを持ちません。グローバルなステートやプロパティーは使っていいよ」ということらしいです。

articlesection の子孫じゃない場合、つまりサイトのヘッダーとして header を使うみたいな時は暗黙的に role="banner" という ARIAセマンティックが規定されるということでしょうか。逆に、articlesection の子孫の場合、例えば記事タイトルとか投稿日時などのメタ情報を記事内に記載する場合に使う header は ARIAセマンティックを持たない。暗黙的な ARIAセマンティックを持っている要素に対して、role 属性を付けるのは非推奨ということなので、サイトのヘッダーとして使う時は role="banner" を付けるのは非推奨になるようです。

footer の場合も role="banner"role="contentinfo" に変わっただけで同じです。 コピーライトや作者の連絡先を載せているサイトのフッターとしての footer には暗黙の role="contentinfo" を付けるのは非推奨になるようです。

role 属性は補助輪

先日買った書籍「コーディングWebアクセシビリティ」の P90からP99「4-2 有名なランドマーク」という節に、role 属性に関することが書かれています。特に重要だと思ったのは、暗黙的なARIAセマンティックを持つ要素に対して role 属性を付けるのは、自転車に補助輪を付けているようなものという箇所です。

role 属性無しの HTML 単体でアクセシブルな状態ならばそれでよいのですが、今現在はそのような状態ではありません。書籍内に補助輪は、補助輪なしで走れるようになるまで自転車のタイヤを支えるためにあるのです。とあります。ARIA in HTML を参照するように書かれている HTML5.1 はまだ草案段階ですし、古いブラウザのサポートもあるので、今現在はまだまだ role 属性という補助輪なしで走れるような環境ではありません。時期尚早だと思います。

ということで、role 属性という補助輪を今すぐに外せるとは全く思いませんが、後々はこうなっていくということを覚えておきたいがためのメモでした。